Soil非営利スタートアップを支援するインキュベーター・アクセラレーター |

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新世代のインパクト投資による資金の流れが日本を変える

2023.02.08

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非営利の分野にスタートアップ業界の知見や資金を持ち込み、新たなエコシステムを作り上げていく。社会課題の解決の規模を拡大していくSoilの構想を実現していくためには、多くの先駆者の経験やアイデアが不可欠です。

Soil代表の久田哲史が関係する分野で活躍する方々と対談するシリーズ。初回ゲストは、ともに1995年生まれで、それぞれ関西と東海を中心に社会起業家の育成に取り組む株式会社taliki代表取締役の中村多伽さんと株式会社UNERI代表取締役の河合将樹さんです。

中村 多伽(なかむら たか) 株式会社taliki代表取締役CEO / talikiファンド代表パートナー
1995年東京都生まれ。大学4年時に株式会社talikiを設立。関西を中心に200以上の社会起業家のインキュベーションや上場企業の事業開発・オープンイノベーション推進を行いながら、2020年には国内最年少の女性代表として社会課題解決VCを設立。
河合 将樹(かわい まさき) 株式会社UNERI 代表取締役
1995年愛知県生まれ。学生起業家向け私塾の運営に従事した後、大学6年目で株式会社UNERIを創業。東海を中心に社会起業家育成や300件の共創事例の創出等、エコシステムの基盤を整備。2021年にインパクトリターン100%の資金提供を開始。

学生時代に起業した背景

久田:お二人は共に社会課題の解決に取り組む個人や組織を増やす活動に取り組まれています。何がきっかけだったんでしょうか。

中村:私は学生時代に国際協力団体の代表として、カンボジアに2つの小学校を建設しました。その経験から、社会課題解決の資金面と構造面で課題を感じ、ニューヨークに留学して報道局で働きながらビジネススクールに通い経済と政治について学びました。社会課題の解決を仕組み化して、持続可能なリソースの流れを作り、課題解決プレーヤーの絶対数を増やさないといけない。

そう考えて、大学4年のタイミングで、talikiを創設しました。社会課題の解決に素早く取り組むためのゼロイチを作り、ファンドで投資し、グロースで育て、大手企業との連携を含めた離陸までをサポートしています。過去5年で育成した事業数は約200、投資金額は累計2億円になりました。

河合:私は幼い時から「日本の標準的な教育」に課題意識を持ち、高校での出張授業、40カ国への留学、内閣府の国際交流事業に参加してきました。その後、標準の型にはまらないイノベーターがローカル起点で生まれない構造に課題意識を持ち、場作りを学ぶ為に起業家育成を専門とするNPOで働きました。その後、名古屋で株式会社UNERIを創業しました。

弊社では、創業直前直後の社会起業家が生まれる場の設計、中小企業や自治体と連携した実証実験や販路拡大、会社が創出する社会的価値の可視化・分析、全国の独立系VCを紹介し資金調達を支援、といった形で、起業家が成長する為に必要な機能を一気通貫で実施しています。過去3年間で、社会起業家の卵が約120人、共創事例が約300組、調達事例が4組3.6億円。少額ですが弊社の100%自己資本でEXITを求めない返済不要120万円の資金提供もしました。

久田:私は15年前、学生時代に株式会社Speeeを創業し、その後は代表を退いて新規事業にメインをおき、今はブロックチェーンに関する企業を運営しています。営利スタートアップと同じようなエコシステムが非営利の領域にも必要と考えてSoilを設立し、非営利スタートアップ向けのアクセラレーター、インキュベーターとなることを目指しています。

「非営利スタートアップ」は一般に馴染みのある言葉ではありません。けれど、中村さんや河合さんが支援している人や組織と近いところにあると思います。エコシステムを生み出すには、様々なプレイヤーを巻き込んでトレンドを作る必要がある。そのためにこういう言葉を意識的に使って、自分たちがどういう人達を支援し、増やしていきたいのか定義づけています。

この分野での課題は「非営利の事業性資金が不足していること」だと考えています。資金の流れやテクノロジーへの理解、事業創造のナレッジを持ち、影響力のある営利企業での起業家が率先して解決していくモデルの構築を目指しています。

僕らにしかできないところを支援する

中村:非営利と営利の違いはどう定義しているんですか?社会性の観点は?

久田:株式会社の事業は経済的リターンと社会的インパクトの両立を求めますが、前者を求めず、後者を志向する会社を非営利スタートアップと呼んでいます。

中村:貧困・環境・地域振興など、注力したいテーマは決まってますか?

久田:テーマはあえて決めていませんが、テクノロジーを活用することは重要だと思っています。課題は普遍的、「誰も思いついていないもの」はほとんどないはずです。課題はあるけれど、解決方法がわからないときに、テクノロジーなどの新しい解決策がないと新しい事業は生まれづらいはずです。

中村:解くべき課題と資金供給とがリンクしてないのは、資本主義の歪みだと思っています。医療のように解くべき課題が明確で資金源もあり、解決されたら人類の幸福に資することがわかりやすいジャンルもありますね。


久田:経済的リターンがあるところには、お金が集まるはずです。そういうのは僕がやらなくても他の誰かがやる。僕らにしかできないことをやりたいと思っています。

支援先を選ぶための指標とは

河合:支援対象に株式会社が入っているところが面白いですね。営利か非営利かを法人格という記号だけで判断し、株式会社は採択から外れるケースが、この手のものは多いです。一方、20代の社会起業家を見ていると、一見すると一世代前であればNPOでやるものを株式会社でやっているところが多い。そういった人にも贈与性の高いお金が流れるのは現代的で本質的だと思い、素晴らしいです。

久田:判断材料は社会的インパクトと経済的リターンであって、法人格はどれでもいいと思っています。株式会社は企業価値の最大化という存在意義、足枷を持っています。売上・利益をあげることが期待される。ただ、株式会社であっても経済的リターンを追及しないところがあってもいい。資金調達の選択肢を増やしたい起業家がいることも自然で、非営利でイグジットしないところもあれば、目指せるならやりたいから株式会社にしたいところがあってもいい。

河合:社会性の高いインパクトを出せるかどうかについて、どういう基準で採択しますか?

久田:お二人は選ぶにはソーシャルインパクトを明確に示すべきだというお考えですよね。Soilのような個人の寄付であれば、より自由にできるのではないかと思っています。営利スタートアップを起業する際は「売上利益が上がりますか」と聞かれます。でも、売上が伸びるまでに時間がかかるものもある。私が今やっているブロックチェーンもそう。世界を変える技術だと思うからやっています。

非営利の場合でも、創業期にソーシャルインパクトなどを本当に示さなくてはいけないのか。営利企業と違って売上利益などのわかりやすい指標がないからこそ、早い段階で方向性を示さなくてはいけないのか。個人的には、営利でも非営利でも、ゼロイチで始める人たちに多くを求めすぎず、創業期は自分達が解くべき課題と課題解決に集中した方がいいと思っています。

河合:「非営利」に流れる補助金や行政事業などの伝統的資金源は、要求しているものが「アウトプット(行動)偏重主義」なのが問題だと感じています。要求しているものが行動=アウトプットなのか、結果=アウトカムなのかによって大きく変わると感じています。本来はアウトカム(結果)から逆算して、お金の量や出し方の基準を決めるべきだと思っていますが、実際はアウトプットに対してはお金を出すが、アウトカムに紐づいていないことが多い。

だからこそ、年度末に報告書をたくさん書かないといけなかったり、単年度でわかりやすい数値の結果が出ないといけなかったり。けれど、本質的な社会課題解決にアプローチするなら、単年度という短いスパンで評価するのは難しい。でも、個人のお金であれば超長期のアウトカム志向の資金源になりえる可能性は高いですね。

中村:IMM(インパクト・メジャーメント・マネジメント)は流行りだと思うけれど、シードでやるのには適していません。課題解決に集中すべきというよりも、指標自体を模索する過程なので、インパクトを測っても表層的になりがちです。プロダクトを作ってる最中に、アウトプットの先のアウトカムを求められないと思います。

久田さんがインパクト「指標」ではなく、「方向性」という言葉を使われているのは、事業目的をどれだけ固定するのかというところにポイントがある気がする。私は事業目的をすごく重視します。起業家にはグラデーションがあるし、変わっていく。私たちが育成した起業家たちも、途中で事業目的が変わることはあるし、イグジットする気はないと言っていた人が、2年後にはIPOしたいと言いだすこともあります。

社会性が高いことをしたのは存在意義を認めてほしかったからで、メディアに出て注目を浴びた瞬間にモチベーションがなくなる人もいる。その前提で、talikiは「この社会課題を解決するまで死ねない」みたいな人を絶対に応援したいと思っています。

久田:起業する目的がなければ起業するなというのは違う。起業後に「ビジョンは何か、何を目指しているか」を問われ続けることでビジョンは作られるし、変化もする。やってみなきゃわからないことの方が多い。変わることは自然であり、挑戦の総量を増やすことが正しいと思います。

そのためにも、社会課題にアンテナが高い人や、実務能力が高い人に広くソーシャルの分野に来てもらいたい。想いがあっても実務能力が限られてて、組織としての成熟度が低いところは多い。そういうところを支援するのもいいですが、すでに能力がある人がチャレンジした方が成功に近い。シリアル・アントレプレナーがうまくいくのと同じ構造です。

想いがなければやれないという前提はありますが、実務能力や学習能力が高い、メンタリングをきっかけにして自走できる優秀な人を増やさないと、新しいエコシステムは実現していかない。それに、副業での非営利スタートアップが増えたら、もっとビジネス文化が非営利に入ってくると思います。

間口を広く、挑戦者の総量を増やしていく

中村:挑戦の総量は増やさないといけないし、誰でも参画できることは大事だけど、社会課題解決と標榜してるのに、実際に解決してない団体が増えることの悪影響を心配しています。前進していることを全ステークホルダーに示した方が、やればやるほど社会は良くなると証明できます。成果のモニタリングはどうしますか。

久田:さっきの話とも絡みますが、創業期に成果のモニタリングするべきかどうかは悩んでいます。

中村:創業期は私もできないと思います。

久田:どの段階かですべきだとは思います。間違った人が入ってきて乱すのは良くないのもその通り。ただ、間口が狭くならないようにしたいですね。

中村:補足すると、お金かけたけど意味なかったからやめようと思われてしまうのを避けたい。社会の潮流的には増えていくと思うけれど、CSRとかインパクト投資とかやったけど、結果出なかったよねという話にはなってほしくないですね。

久田:意義があるから世の中が良い方向に変わるわけではなくて、結果が変わったから意義が伝わるというイメージを持っています。かつては起業なんて怪しい存在でした。今は起業の意義を語る人がいっぱいいる。それは誰かがうまく行って、あの人みたいになりたいと思った人たちがいるから。その過程で本質的な意義が浸透していく。

Soilはまだ設立されたばかりで、「選考」と「支援」のケイパビリティが足りてない。お二人のような経験を積んできた方々と一緒に、僕らのプログラムに参加する人たちをどう育てるかみたいな話をできるといいと思います。僕と同じように起業家が財団を作ったとしたら、その人たちはお金を出したり、発信して人を集めたり、事業へのアドバイスもできる。けれど、ソーシャルインパクトの定義や社会的意義を掘っていくことはできない人が多い。そこを補完し合えるといいなと思います。

河合:久田さんの取り組みを見て「私もやりたい」と思うテック系の起業家はたくさんいると思います。Soilのどんな事例に心が動かされて次の連鎖が生まれるのか。仕掛けは考えていますか?

久田:営利スタートアップの世界の人たちに馴染みのある「語りやすいナラティブ」を作ることだと思っています。そして、影響力のある人を引っ張ってくること。メディアも巻き込む。営利スタートアップでいうシードやシリーズA、エコシステムの中でのプレイヤーのマッピング、非営利系のアワードやカンファレンスなども、いずれ作れたらいい。営利スタートアップがやってきたいいところを非営利に持ってきて盛り上げたいと思っています。

アスリート的な営利と、ものさしが多様な非営利

河合:多くの方々と話すと「雇用創出してるから社会課題解決してる」と言われる例が多くて、手垢のついた言葉だと実感する場面が正直多いです。社会課題の解像度はまだまだ高められる。市場経済の中で解決できる領域もあれば、贈与を原資にした市場経済の外じゃないとできないなど、グラデーションはすごくある。社会起業家特有の「死の谷」を乗り越えるには、贈与のお金が適切だと思っています。

それがきっかけになって、研究開発型スタートアップのシード期を支援する「NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)」の社会起業家版みたいなのができる。そんな発展があると、次世代にとってもいい。久田さんにはそういう大きい絵を描いてもらえると、業界の一員として非常に嬉しいし、ありがたいです。

中村:社会課題の解決に取り組むことが憧れになる世界線になったらいいと思っています。ただ、メルカリのような企業を作りたいとか、スティーブ・ジョブズに憧れたけど、自分は起業家には向いていないからVCになりたいみたいな、一攫千金に夢を感じる本能もあると思います。ソーシャルの業界にそういう本能的な憧れを移植できる感覚があまりない。

河合:物差しが一つじゃない感じがします。スタートアップは時価総額をどんどん上げていくという単一の物差し。けれど、ソーシャルだとそれぞれの領域で、貧困だったら貧困、介護なら介護に関する課題解決の物差しという様に多種多様です。

中村:ソーシャルという括りでさえも、結局私たちが勝手に言っているだけで、本人たちは全然違うよと思っていることもあるかもしれない。

久田:非営利のプロジェクトに関わった時、純粋に楽しいとか意義とか感謝とか。もっとこうした方がいいみたいなあらゆる仕事に共通する感情とか。いろんなことを感じられる。営利企業では売上利益の追及が正当化されていてアスリート的。無理して働く部分があります。

中村:ニュースで社会課題を見て大変だと思うけれど、解決に取り組んでみると、貢献や自己効力感が感じられて、生きている理由さえも見出せる。それが好きでやってるところもありますもんね。課題を解決する現場の手触り感が生きがいという人はこの業界にすごく多いイメージがあります。

河合:一方で、その手触り感を重視したいが故に、労働集約になってテックが入ってこないというのはジレンマですね。

テクノロジーと分散型への転換

中村:私たちも社会課題解決はテック、特にディープテックが大切だと思っています。投資を検討している案件でも、経血から女性の体の状態がわかるようにできないかとか、ほぼ目が見えない人が見えるようになるメガネ開発とか、気候変動に関して二酸化化炭素の吸収や固定化のテクノロジーとか。こういったテクノロジーに関してどれくらいの支援が受けられるのでしょう。

久田:時間が限られているので、たくさんのことを初期でやれないのが現状です。専門の人を紹介したり、自分ができる範囲でアドバイスしたりが第一。テクノロジーの分野ごとに解像度が高い人はいます。僕の場合はブロックチェーン、ディープテックと言われるところです。

関連する話をすると、権力が持っている富と統治を分権化するテクノロジーがブロックチェーンの一つの特性だと思っています。まずこれから「分散型資本主義」によって、格差が縮小して人がより豊かになり、その先に経済性でなく社会的意義が価値観の軸になり、結果としてある意味では社会課題解決を競う「価値主義」のようになると思う。イデオロギーの変化より先に、テクノロジーによる社会の進化が重要だと思っています。

中村:Z世代が社会性やサステナブルな意識が高いのはなぜか、という話と近しいものがある気がします。Z世代はみんなが倫理的に優れているわけではなく、経済性を追い求めた世代の人たちが幸せに見えないというのが大前提にあると思います。

私たちが10年後20年後に幸せになるにはと考えた時に、物質的な幸せではなく、自己効力感とか意義づけとか、繋がりが感じられることにある。それがSDGsの波とマッチして、社会性の高い事業とかに繋がっていった。

孤独が課題を加速させる側面もあれば、解決を加速させる側面もある。悲しくなりたくないから、社会課題解決をしたいという人が増えるのではないでしょうか。お金が自分を満たしてくれないことは先輩を見てわかったから、幸せになる手段としての社会課題解決に惹かれるという風に。

久田:時代人というか、成熟社会であるZ世代の人たちが20年前にいたら、今のおじさんたちの世代と同じようになっていたかもとも思う。考え方をアップデートしない人は、社会の成熟に従って、その後の人たちにとって古いと思われてしまいますね。

トークンやDAO、社会起業での新たな挑戦

河合:私は最近、規模の最大化ではなく、「規模の最適化」を土台とするお金の在り方を考えています。社会課題分野は資金の最大化より、最適化のほうが健康的なケースが多いと思っています。起業家を見ていても、無理な成長よりも、自分の等身大に近いお金の集め方のニーズが高い。

久田:分散型資本主義のweb3や暗号資産としてのトークンは、今はまだエクイティに変わるお金儲けとして、資本主義的に蝕まれているケースも多くみます。しかし本質的には、ソーシャルプロジェクトとの親和性は非常に良いはず。ぜひ取り組んでみていただきたいですね。

中村:一番共感する人に参画してもらって、その人たちが社会的な便益を得られたりとか、自己効力感などの精神的な便益を得られたりとかするには、エクイティよりトークンの方が親和性あるよなと思っていました。最近のweb3×社会課題の領域でいくと、消費電力が多すぎて環境によくないという問題でいくつか頓挫はしていたが、面白いものは多いです。私たちも、社会課題×web3に投資したというケースは作りたいと思っています。

社会起業家には2パターンいて、オーナーシップを持っていたい人と、社会を前進させる1つの駒でありたい人。普通の営利起業家と社会起業家との違いでもあるんですが、課題解決が複合的で難しいので、同業が多ければ多いほど社会課題解決が加速するから良い、と考える人が多いです。

株式会社を一人一人立ててしまっていると一緒にやるのは厳しい。けれど、プロジェクトに参画する形なら同じ志向性の人たちで集まりやすい。投資検討をしていても、同じようなことをしたい起業家はたくさんいます。みんなで一緒にやったらいいじゃん、と思うこともあります。

久田:「分権的な起業」は挑戦ですね。株式会社だと代表取締役がどうのこうのとなり、共同代表などのやり方で工夫して頑張ってる。最初からDAO(分散型自律組織)でやれば上下はなくなる。5人なら5人の投票、関わる人が1000人なら投票で何%集まらないと決まりません、みたいな。最初から新しいガバナンスモデルでチームを作るのも面白いと思う。

ただ、立ち上げは特定の強いリーダーシップが必要で、分散化は立ち上がった後というのが、今のところブロックチェーンの実験の結果。ソーシャル系のプロジェクトで、複数の組織の利害が溶け合うようなスキームがあったら面白いかもしれない。


河合:私の会社は社会起業家を、出資型、融資型、寄付型とお金の3タイプで分けています。その会社の「お金の色」が何%なのかを出している。例えば、介護の領域で事業展開する会社で、出資型、融資型、寄付型の会社がある。エクイティでやっていく株式会社、融資やプロフィットシェアで成長していく株式会社や事業型NPO、寄付でマネタイズをする寄付型NPOや一般社団法人などです。

そういう寄付型は、ソーシャル業界全体的に、デザインやテクノロジーに投資をできる会社が構造的に少ない。すると、Webサイト上のブランディングに苦戦し、プル型の機会を逃している印象です。

一方でテックやデザインに力を入れているソーシャルスタートアップは入社希望者や、プル型の機会創出に長けており、数が増えていく。それぞれの法人格の色に得意・不得意がある。例えば、シングルマザー向けの領域だと、シングルマザーの方々との伴走は絶対必要。だけど、その部分は株式会社だとどうしてもコストが合わない。そうなるとNPOがやる。ここから先は株式会社で、ここからは非営利で、ここはスタートアップで、みたいな、それぞれのソーシャルイシュー領域ごとに法人格やお金の色を意図的に選択し、役割分担した経営スタイルが増えると嬉しいなと思います。

久田:お金の集め方は差が出ますね。

河合:寄付型じゃないとできないことは明確にあります。ビジネスセクターのノウハウがソーシャルに入ることはあまりなかったし、あっても続かないケースが多い。その逆はすごく増えている印象がある。ファンドレイズの部分も、スタートアップとソーシャルの先端は交わっているケースがある。

IMMやインパクトデューデリジェンスをやり続けるメリットが、インパクト投資を受ける事業者側にあまり伝わっていないと感じています。起業家側からしたら、それらは投資用の指標でしかなく、自分たちにとってはコストと見られていることが多い。

中村:起業家との信頼構築を築くことで、インセンティブ設計はもっとできるはずだと思います。起業家が事業推進のためにIMMを必要とジャッジすることも多い。ただ、指標を確立できるかどうかは別です。元から尺度を決めてそこに当て込むのは無理なので、常に更新する前提です。

久田:採用とマネジメントという意味では、大事な指標になると思います。

中村:効用としてうたわれているのは、基本、採用とマネジメント、あと資金調達ですよね。

久田:であれば会社経営においてものすごくクリティカルですよね。マネジメントは、それを軸にしてOKRとかにしていけば、目標管理、評価につながるかもしれない。

河合:インパクトKPIやインパクトOKRを策定している会社もあるが、この事業を作ってどんな世界を描くのかを、一枚絵で見せるだけでチームメンバーや新卒にも伝わるというのが、IMMの一番の効用だと思っています。

「Soilは歴史的な転換期の象徴」

久田:社会課題解決の分野の先駆者の方々にお話をうかがう対談企画の1回目でしたが、インパクト測定から、テクノロジーについて、資金提供の方式の多様性などなど、テーマが多岐にわたり、純粋に面白い場でした。たくさんの学びがありました。ありがとうございます。

中村:贈与性の資金提供であること、テクノロジーを活用したクリティカルな解決を支援すること、裾野を広げること、どれも素晴らしい活動だと感じました。今後もご一緒できることを楽しみにしています!

河合:Soilは既存の財団とは一線を画す、歴史的転換期の象徴です。IPOした起業家が財団をつくり、社会起業家が生まれる土壌を耕す使い方が今後も増えて欲しい。その為に、引き続き様々な形で連携出来ることが楽しみです!

久田:Soilにまだまだ不足してるケイパビリティをお持ちのお二方と、プロジェクトでご一緒できたら、幸いです!

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